2004年8月1日発行

 共同建替事業の記録『みくら5』の完成まで 発行!     



 まち・コミュニケーションの御蔵事務局がある共同建替住宅「みくら5」の建築プロセスを記録した書籍が完成しました。まち・コミ前代表の小野幸一郎氏の声かけにより、「みくら5」に関係した多くの人々の記憶や思いを整理した記録集であり、「被災住民による共同建替住宅『みくら5』にまつわる全てを記述したもの」です。
 今回、「『共働』共同建替事業の記録〜「みくら5」の完成まで〜」の発行を記念して、「みくら5」をよく知らない読者のみなさんに建物の紹介をすると共に、記録集の概要を簡単に掲載させていただきます。


本体¥1,000(郵送料¥160) で販売中!
詳細はまち・コミュニケーションまで

「共働」とは・・・・・・
本書では、共同でもなく協調でもなく、また協働でもなく、それらの中間の領域で、有形無形に関係する各者が、それぞれの意思で、参加し汗をかくことに意義や喜びを見出し、それぞれの持てる能力と時間を使い、共有する目的実現のために、同じベクトルの方向に努力し働き、一歩でも前進したときに感激を分かち合う様を言う。(本文より)


「みくら5(ファイブ)」について


 「みくら5」は御蔵で被災した人たちが、区画整理事業の換地を利用してそれぞれの土地を集め、御蔵通5丁目に建設した共同建替住宅です。事業のコーディネーターを、ボランティア団体であるまち・コミが務めたという点で、震災復興の特徴的なマンションとなっています。震災前の長屋住まいにあった「共に住まうことの良さ」を目指して建設されました。

・建物概要
 神戸の建築家、武田則明氏が設計したマンションです。御蔵通5丁目に存在することから「みくら5」と名づけられました。概観はコンクリート打ち放しで、上に行くほどセットバックしている階段状の建物です。12人の権利者のそれぞれの世帯状況に合わせ、各戸のプランはまったく個別のものとなっています。いわゆるコーポラティブ形式の集合住宅です。表通りに面する北側の一階には、自転車屋と飲食店の二つの店舗が入っています。

・路地空間の再現
 「みくら5」一階の廊下は、通り抜けが可能となっています。オートロックシステムの設置も検討されましたが、「閉まりきったマンションは閉鎖的で冷たい」、「長屋らしさを少しでも残したい」との意見から、設置が見送られました。そのため、マンションの住民だけでなく、さまざまな人が通る路地のようになっています。廊下の壁の一角には手の型をとったたくさんのコンクリートがタイル状に並べられています。これは「みくら5」の住民や、工事関係者、まち・コミの手形であり、共働の証です。修学旅行生等、御蔵を訪れる人は興味深そうに手形に自分の手をかざします。


・コミュニティスペース「プラザ5」 
 権利者の一人である兜コ庫商会の部屋を、田中社長がコミュニティの拠点として地域に開放されました。この部屋は、地域住民を中心とするボランティア団体「プラザ5運営委員会」によって運営されています。震災で失われた人と人の繋がりをつくるための様々な事業が行われています。開所当時から行われていた「ふれあい喫茶」や「食事会」は、今年一月に完成した自治会館に引き継ぎましたが、地域のお年寄りを預かってお世話をする「ミニデイサービス」や、大人気の「絵手紙教室」等は継続的に実施されており、まだまだ御蔵のまちづくりの重要な拠点のひとつとなっています。また、何の事業を行っていない日にも、「みくら5」の住民をはじめ、たくさんの人がふらっと遊びに来る憩いのスペースです。

・集会室「結の間」
 「結(ゆい)の間」は「プラザ5」と廊下を挟んでむかいに存在する集会スペースです。マンションの管理運営に関する会場としてはもちろん、住民同士の懇親会等にも利用されています。また、盆や正月等、「みくら5」住民の親戚が集うときには、臨時の客間として使用されています。さらに我々ボランティア関係者や学生等は、安価な宿泊施設として使わせていただいています。神戸にこられる用事等がありましたら、ぜひご活用ください。予約・お問い合わせは「プラザ5」(078-576-7964)まで。

 「みくら5」の魅力は、昨年度自治会とまち・コミが協力して完成させた「御菅(みすが)カルタ」の一句として、住民の一人であるSおばあちゃんが詠んだ言葉に集約されます。
「『みくら5』は楽しいファイブ

共同建替事業の記録 「みくら5」の完成まで


Chapter01  復興街づくりのプロセスにおける共同再建案の登場

導入部であるこの章では、阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けた御蔵のまちで、復興計画から取り残されがちな人々を救済し、人に優しいまちとして再生するための共同建替住宅が提案され、実現に向けて動き出すまでの取り組みが語られます。執筆者は東京都立大学社会科学研究科(当時)の木村明子氏です。氏はまち・コミの運営委員の一人である浦野正樹早稲田大学教授の研究グループの一人として、従前居住者の生活状況、再建に関する意向等の調査を行いました。TOPICSでは、被災地各地で問題となり、今回のケースではまち・コミもコーディネーターとして頭を悩ませた土地の権利解消における一件が取り上げられています。

Chapter02  共同建替構想の実現化場

 はじめに共同建替案を作成した小島孜近畿大教授に代わり、神戸の建築家、(株)武田設計の武田則明氏が設計者として選定されました。この章では、武田設計で、共同建替住宅の初代担当者として実務的な作業に従事した中江研氏から、設計者と権利者、コーディネーターの間でのやり取りから、共同建替住宅の基本形案がほぼ確定するまでが語られます。できるだけ早期の生活再建を望む権利者、より良い住宅を作りたいと考える武田設計、建物の建設には厳しい条件を設けている住宅都市整備公団・・・互いに譲りあえる部分を模索し、一進一退を繰り返しながら計画は進みます。事業のターニングポイントとしてTOPICSでも取り上げられている「保留床ゼロへの大英断」は必読です!

Chapter03  共同建替事業の成り立ち

 神戸大学に行く中江氏に代わって担当を引き継いだ武田設計の藤川幸宏氏が、着工にむけて、全体案および各戸の住戸プランが権利者との話し合いによって確定され、事業の契約がなされるまでを描いています。ポイントとなるのは、年齢、収入等、条件の異なる権利者が多数集まって造られる共同建替住宅の建設に関し、事業費をどのように調整していくかというお話です。

Chapter04  着工後の諸問題〜プラザ5開設〜

 前章に続き藤川氏によって、着工から建物の竣工までが描かれます。共同建替住宅の名称も現在の「みくら5」に決定されました。着工後も内装仕上げに関する権利者と設計者の認識の違い等、様々な問題がありました。立場や知識の違うもの同士の情報共有の難しさがわかります。この章のTOPICSはChapter02でも取り上げられた、公団が保留床の受け持ちを拒否した時、つまりこのプロジェクトのターニングポイントで、キーマンとなった兜コ庫商会の田中社長から、当時の秘話や胸の内、コミュニティスペース「プラザ5」の誕生についてが語られています。

まとめ、寄稿文  etc.

・総括・提言編  前半はChapter02を執筆した木村氏が、震災等で生まれた共同建替を実現するための課題について、及び事業のコーディネーターを務めたまち・コミ前代表小野幸一郎氏、キーパーソンとなった田中社長へのインタビューが掲載されています。後半では、現場と住宅・都市整備公団という組織との板ばさみになった田中貢氏より、「みくら5」の経験から、これからの住宅・社会に対する示唆が述べられます。 ・関係者編  小島教授をはじめとする共同建替プロジェクトに専門家として関わった人たちから、自身の関わり当時の想いを寄稿していただきました。 ・権利者へのインタビュー  兜コ庫商会を除く11名の権利者の方に、共同建替住宅への参加の理由や、「みくら5」での生活についてお聞きしています。個別の事情から生まれるプロジェクトへの想いがわかります。